コロナ禍では人と人との関わりが制限され、人口の密集した都市圏から離れる人が続出しました。マスコミも地方移住や二拠点生活を多く取り上げ、テレワーク技術の発達や働き方改革とも相まって、地方への移住は大きなブームとなったのです。
令和5年(2023年)5月、政府は新型コロナウイルス感染症の位置づけをそれまでの2類から5類に変更し、私たちの生活様式は徐々に以前の姿に戻りつつあります。地方移住のブームも、この変更を機に下火となったのでしょうか?今回は、意外にもブーム真っ只中の地方移住について解説していきます。
地方移住が人気となった背景
まずは地方移住が人気となった背景について、確認しておきましょう。
感染症や自然災害の影響
近年地方移住が人気となった大きな要因の一つは、新型感染症の感染拡大です。冒頭でも書いたように人と人との関わりが制限されたこと、またこれを機会として人口密集地から離れようとする人たちが地方への移住を選択しました。他にも、自然災害の発生時には人口密集地が危険だと考える人たちもいて、地方への移住は人気に。
国の地方創生戦略
地方での少子高齢化が進む日本では、国も地方創生戦略を推進して地方への移住を応援しています。地方創生戦略では「地域の産業振興」や「観光などの地域資源活用」、「人材育成・専門家の派遣」、「移住支援金の援助」などを通し、移住による地方の活性化や持続可能な発展を目的としています。
また特に国と自治体による移住支援金の交付は、地方移住へのハードルを下げる効果があると言えます。
リモートワーク技術の発達
新型感染症の感染拡大は、リモートワーク技術を発達させました。多くのオンライン会議用アプリやリモートワーク用のアプリが開発され、オフィスに出社しない働き方が可能になったのです。また技術の発達もさることながら、自宅用PCやセキュリティを完備したサーバーの整備など、リモートワークに特化したインフラも導入が進みました。
働き方改革・ライフスタイル・価値観の多様化
リモートワーク技術の発達・普及により、働き方改革の推進にも拍車がかかったと言えます。子育てや介護をしなければならない人は自宅で仕事をし、通勤時間を無駄にする必要がなくなりました。企業も通勤費削減や残業代の低減、オフィスの縮小など、これらの施策はコスト削減や人材の確保につながるので多様な働き方を応援しています。このような技術の発展と働き方の改革は、二拠点生活や地方移住をより現実のものとしたのです。
技術の進化と価値観の多様化が地方移住を後押し
上記のように、新型感染症の感染拡大と国の地方創生戦略がリモートワーク技術の発達とインフラ整備を進めましたが、それによって生まれたのが価値観の多様化です。具体的に言えば、働き方や生活、子育て、居住地の選択などについて選択の幅が大きく広がり、人々の意識が変わったのです。
これによって、「自然が豊か」、「子育てしやすい」、「生活コストが低い」、「安全」、「ストレスが少ない」などのメリットを持つ地方移住が注目を集め続けています。新型感染症の脅威は去りつつありますが、価値観の多様化は既に私たちの意識に根付いていると言えるでしょう。
国も移住支援を継続中
国も策定した地方創生戦略に基づいて、地方移住の支援を継続中です。具体的には移住支援金と呼ばれるものですが、この支援金は国と地方自治体が折半して利用者に支給しています。
たとえば一定期間以上、東京23区内に在住または東京圏(条件不利地域を除く)から23区内に通勤していた人が東京圏外に移住する場合、いくつかの条件はありますが世帯での移住で最大100万円、単身での移住で最大60万円の受給が可能となっていました(移住先で地域課題の解決に関わる社会的事業を起業すると最大200万円まで)。
この支援金は2023年度から増額となり(子育て世帯のみ)、子育て世帯が地方に移住した場合、18歳未満の子どもに対する加算額が「1人当たり最大30万円」から「1人当たり最大100万円」に増額されています。つまり夫婦と18歳未満の子ども2人で移住した場合、最大で100万円+200万円の300万円となり(増額前は計160万円)、さらに起業した場合は最大合計で500万円の移住支援金を受け取れるのです。
この支援金は創設当初(2019年)、移住先での就業もしくは起業が支給条件となっていましたが、2021年度から移住前の仕事をそのままテレワークで続ける人も対象となったことから、制度利用者が急増しています。
まとめ
ブームの始まりは国の地方創生戦略や感染症の拡大ではありましたが、今や地方移住は価値観の多様化と共に、私たちの意識にしっかりと根付きました。さまざまなメリットがある地方移住。まずは短期の体験移住やマンスリーマンションを借りる二拠点生活から始めてみてはいかがでしょうか。
【参考】
移住支援金のはなし
https://www.chisou.go.jp/iikamo/ijushienkin/index.html